たなかは、例年10月〜6月間はマスクをつけている。

 何故なら、口を見られるのが恥ずかしいからだ。挿絵2


 別に特別歯並びが悪いわけでもない。むしろ良い方だ。では何故恥ずかしいのか。それについてはわからない。知らない人に股間見られたら誰だって訳もなく恥ずかしい。その感じである。
 ご飯を食べ咀嚼している姿を見られるのは、とにかく恥ずかしい。
 ありがたいことに「ご飯行こ!」と言われることがあるが、なかなかの修羅場である。ご飯ではなく喫茶店で何か飲むだけではダメなのかと毎回思うが、ダメなんでしょうね。できればマスクの下からストローで何か飲みたい。
 そんなことしているせいで、過去に「初めてマスク以外の顔を見た」「食事する印象がなかったけど、食べるんだね」という、なかなか言われないことも、言われたことがある。
 もっと本音を言うならば、口どころか目も隠したい。目を合わすことにかなり抵抗感じる。しかし、しっかり大人ッッッ!!という年齢なので目合わせなくてはいけない機会が多い。


挿絵3

 相手と目が合い焦点が合致し黒目を見すぎると
(この人ひょっとして心読んできてねぇか?よし試しに。ウンコウンコウ〜ンコ!あとででっかいウンコで頭殴りつけるからな!・・・・・・なんだ心読めねぇのか、ガッカリだよ。)
と一人で期待し一人で落胆するなど、全くの他所ごとを考えてしまう。集中力が散漫としている。いや、ある意味目を合わせることに全力投球なのかもしれない。
 こんな私にも社会人であり友達もいる。友達と食事をとるとき自然のに振る舞っているが、内心どうしても恥ずかしい気持ちになる。最後の足掻きとして咀嚼時は、手で口を隠す。これが精一杯の抵抗である。
 口内に食べ物がないときも、手で口を隠すのだ。
挿絵1

 先日、初対面の人と食事をしたとき、口を手で隠し続ける私の奇怪な行動に疑問を示した。
 「なんでずっと手で口隠してるんですか
当然の質問である。
 私はすかさず
 「すみません、上品なんで
挿絵4


 「
………。え?…ん?え?
バグちゃった、初対面の人。
 初対面の人は続けて

 「たしかに上品ですけど、え…?謙遜してそうで全然していない!何ッ!!!
 「へへへっ…上品なんですよ、私
 謎の追撃をする、私。
 その時複数人いたが、不思議な空間になった。幸い他の人たちは、普段の私を知っているので、なんとも思ってないようだ。
 このとき、なぜ『上品なんで』と言ったか自分でもわからないが、初対面の人にはかなりインパクトを残しただろう。おそらく印象は『全然謙遜しない人』だろう。